イノベーション
それぞれの応用分野に適した材料
5年前に入社する前は、リー・ロスルートナーのティムケンに関する知識は、彼が育ったネブラスカの牧場で見たことに限られていました。彼と父親がトラクターのベアリングを交換するときに、黒とオレンジのボックスをワークベンチでよく見かけたものです。
ティムケンの研究開発部門に参加したとき、ロスルートナーの視点が、劇的に変わりました。「私はティムケンが事業の幅広さに気づいたのです」と彼は言います。「私は冶金学の博士号を持っています。希望するほとんどすべての金属熱処理プロセスを実行できる研究所にアクセスできることほど、嬉しいことはありません」。
今日、彼は材料研究開発部門のマネージャとして、その精神をチームにも伝えます。「この分厚い、ASMハンドブックの第4巻を見てください」と彼は言います。ASM Internationalは、材料知識の収集と普及で知られる、108年の歴史を持つ国際的なエンジニアリングのコミュニティです。第4巻の題名は「熱処理」です。
「私は、その本に載っているすべての熱処理プロセスについて、自分なりの見解を持つことを彼らに求めます」と彼は言います。「それが私たちにも使えるか、そうでないか、そしてその理由です。使えるのであれば、それを実現できるプロセスと手段を探すのです」。
原料ブランドからの原料
ロスルートナーは最初、超大口径風力タービンのメインシャフトベアリング用のティムケンのシームレス高周波焼入れプロセスの開発を推進するために採用されました。彼はそこで大きな成功を収め、昇進して材料変換グループを率いるようになり、その後現在の地位に就きました。
風力エネルギーの仕事を行なったので、ロスルートナーはルーマニアで多くの時間を過ごし、 プロイエシュチのエンジニアリング中核的研究拠点のチームと働くようになりました。今日、彼と彼のチームは、近くのプラホヴァ工場が担当する高度な硬化プロセスと技術に取り組みます。「そこでは、ベイナイト鋼を製造するのに『オーステンパリング』と呼ばれるプロセスを使用しています」と彼は言います。
チームはまた、過去数年間にわたりコーティング技術で大きな進歩を遂げ、 2020年には製造能力が2倍になりました。「今まさに、それに対する膨大な需要があるため、その分野のグループリーダーであるビクラム・ベデカーも素晴らしい仕事をしてくれました」とロスルートナーは言います。
材料チームは、浸炭焼入れプロセスの最適化も担当しています。これは、ティムケンのオリジナルの1897特許にまでさかのぼる技術です。「私たちはその技術を熟知しているので、それがどこに適合するか、他のプロセスがより適しているのはどこかを知っています」とロスルートナーは言います。
適切な成分、適切な用途
ティムケンが設計したソリューションには、根本的に、それぞれの用途に適切な成分と適切なレシピを特定することが含まれます。「顧客は、特定の性質を引き出したいものを持って来ます」とロスルートナーは言います。「私たちは、化学と構造をまとめます」。
そこにたどり着くにはチームの努力が必要であり、アプリケーションエンジニアが主導します。研究開発部門は、ソリューションがティムケンでの標準のプロセスを超えるような化学的性質と構造を必要とする場合に関与しますが、材料の選択は多くの場合、用途の条件に依存します。製鉄所の連続鋳造ラインで見られるような、最も過酷な衝撃荷重を受け、異物も多い用途では、浸炭焼入れ鋼が必要です。硬い素材の中でも最も硬いものです。それほど極端でない環境で、良好な潤滑を行える場合、ベイナイト鋼も同様に良好な性能を発揮します。
たとえば、最近、ある鉱業および建設機械メーカーは、ホイールローダーのティムケン差動ベアリングを、浸炭焼入れ鋼から、通し焼入れ鋼のものに変えました。農機具の変速機のベアリングでも、ますます硬度の高いものが使用されるようになっています。
「私たちには、ケース浸炭に関する100年の経験があるので、さまざまなプロセスの限界が理解できます」とロスルートナーは言います。「私たちはテストを実施し、データがあるので、他のプロセスもどこでならより少ないリソースで同じような高い性能を発揮できるかがはっきりわかっています」。
風力タービンのメインシャフトの場合、浸炭焼入れのサイクルでは製造プロセスが100時間以上長くなりますが、シームレスな高周波焼入れなら約2時間で同じことができます。「ベアリングの製造にかかる時間が50%短縮されるので、顧客がそれを仕様に書き込むことが多くなってきています。
「私は再生可能エネルギー分野での仕事に大きな誇りを持っています。また、私が雇った多くの人々にとってもそれが強い動機であったことも私は知っています。世界で最も有名な再生可能エネルギー会社の何人かの友人は、私たちがここで風力タービンと、途方もなく大きなベアリングを使って行っている仕事に驚いています。彼らはその難しさを知っているからです」。リー・ロスルートナー
材料研究開発マネージャ
高度なモデリング、より迅速なソリューション
チームはまた、3Dプリンターを使用してプロトタイプ、デモ用ピース、カスタマイズされたツールコンポーネントを作成し、3Dの金属積層造形の付加製造技術能力を評価しています。「3Dは業界で注目されるトピックであり、私たちはそれがどこに合うかを評価しているのです」とロスルートナーは言います。
今のところ、最大の見返りは、プロセスと有限要素モデリングを進歩させるためのチームの努力から来ています。「熱処理プロセスに関するデータを収集することで、より予測性を高めることができます。ハードのプロトタイプを作成する前にソリューションをモデル化し、製品の将来の挙動を予測できます」と彼は言います。
高度なモデリングにより、チームは顧客とより直接的にやり取りできるようになり、顧客は用途の微妙な差異をより明確に理解し、ソリューションにすばやく着手できます。
冶金コミュニティ
材料の研究は複雑ですが、研究室で化学、構造、特性を組み合わせたときに何が起こるかを楽しむ人々にとっては、非常にやりがいのある仕事です。研究室では、日常的に、冶金学上の打ち破りが起こります。
現在、私たちは新しい浸炭およびプラズマ窒化プロセスの最適化に取り組んでおり、事業の他の部門のために、他にも楽しいプロジェクトをやっています」とロスルートナーは言います。「私たちは、風力タービンのギアボックス、いくつかの航空宇宙用合金、極端条件下のオフロードソリューションを検討しています」。
絶えず進化する作業の流れと、効率と進歩を促進するプロジェクトへ参加しているという実感が、仕事の動機となり、彼らは毎日ラボに戻って来ます。
ティムケンの研究開発部門は、お客様と直接協力してES302の耐摩耗性コーティングを開発しました。その結果、風力エネルギー、農業、航空宇宙などのアプリケーションの寿命が劇的に延長されました。詳細は、こちらをお読みください。
Last Updated: 2021/11/19
Published: 2021/05/18